Magical Tome

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一九九九年に、脳死の人からの心臓移植が再開された。 実に、三十一年ぶりのことだ。 しかし、脳死と臓器移植は、今後、さらに大きな問題となってわれわれに迫ってくることだろう。なぜなら、脳死の本質とは、この社会における「人と人との関わり方」の問題だからであり、さらには、臓器移植を可能にした現代の科学文明のあり方をどう考えるのかという問題だからである。 いまから十一年前、すなわち一九八九年に出版した『脳死の人』は、それらの点を徹底的に掘り下げたものであった。本書が、脳死問題だけではなく、広く生命倫理を考えるうえでの基本図書として読み継がれてきたことは、とてもうれしい。「脳死は人と人との関わり方である」という本書の主張は、いまなおその鋭さを失っていないはずだ。 旧版が絶版となったのを機に、このたび法藏館から「増補決定版」として再刊していただけることになった。『脳死の人』初版の本文には、まったく手を加えなかった。 今回、増補決定版と銘打ったのは、『脳死の人』出版後に書いた二本の重要な文章を付け加えたからだ。ひとつは、臓器移植法が制定された一九九七年、心臓移植施設に指定されて緊張感みなぎる大阪の国立循環器病センターで、現役の移植医たちを前に積年の思いをぶつけた「移植前夜、循環器病センターでの講演」(未発表)である。もうひとつは、臓器移植法見直しの年である二〇〇〇年に、雑誌『論座』に発表した、脳死の子どもからの移植についての提言「子どもにもドナーカードによるイエス、ノーの意思表示の道を」である。ともに、『脳死の人』初版発表後の、私の思索として読んでいただければうれしい。 脳死は、われわれの死生観や、現代の科学文明の行く末を考えるうえで、避けては通れない問題だ。これからもしぶとく考え続けていきたい。
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